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せたおんインタビュー:エリック・ミヤシロ

コンサートは気持ちを合わせるコミュニケーションの場

せたおんでは、トランペット奏者、エリック・ミヤシロさんのコンサートを開催します。国内外の一流アーティストたちと共演を重ねてきたエリックさんに、音楽との出会い、演奏活動で大切にされていること、世田谷区での暮らし、そして今回のコンサートに向けての抱負をお聞きしました。

人を幸せにする音楽という仕事
高校時代までハワイで育ちました。父も母も音楽関係の仕事をしていたので、物心がつく前から生の音楽を聴いていました。父は弦楽器からピアノ、管楽器まで幅広く演奏する器用なミュージシャンでした。リビングにはいろいろな楽器がいつも転がっていたので、おもちゃのようにいつも触っていました。気づくとトランペットが一番合っていたという感じですね。中学生の頃からプロとして活動を始めて、父のバンドで欠員が出るとステージに立っていました。
ステージに立つ父は、家で休んでいる父とはまったくの別人です。すごくかっこよかった。しかも、コンサートを観終わって帰っていく人を見ていると、みんな幸せそうで、「楽しかったね」と話している。「うちのお父さんは人を幸せにする仕事をしているんだ」と思いましたね。幼い頃から「音楽の力ってすごいな」というのを身近に体験できていたので、ステージに立つ目的は若い頃から明確に定められていたと思います。
気持ちを合わせ、お客様とつながる
今回のコンサートもそうですが、僕はバンドでリーダーを務めることがほとんどです。音楽は心を使う芸術です。リハーサルで大切にしているのは、参加するメンバー一人ひとりに「自分はこのバンドに必要とされている」という気持ちを持ってもらうことです。みんなが自由に発言できるような雰囲気づくりを心がけ、ていねいなコミュニケーションを大切にしています。みんなの気持ちが通じ合っているかで音楽は変わってきますから。
音楽の演奏では仲間の奏者の音を聴き合うことが大切です。演奏は性格が出るのでテンポをゆったりと取る人もいれば、せっかちに早く取る人もいる。だからこそ自分のパートをしっかり練習し、リハーサルで気持ちを合わせ、歩み寄るのです。
そうするとステージに立った時に、お客様が自分たちの演奏する音楽をどう捉えているかまで気持ちがいきます。音楽は誰かと一緒に楽しむものであり、特に生の音楽はお客様がいるからこそ成り立ちます。歴史的に見ると音楽の起源はお祈りやお祭りで心をひとつにするためのものでした。だからコンサートは、人と人が気持ちを合わせるコミュニケーションの場なんですね。
僕も若い頃は自分のことばかり考えがちでした。でも年齢を重ね、家族もできました。人生経験は音楽を変えます。そして、音楽は嘘がつけないものです。今は自分に正直な気持ちになること、お客様とつながれることを一番大切にしていますね。

勉強になった幼稚園生たちの素直な反応
1989年から日本で暮らし始めて、世田谷区に引っ越してきたのは2007年です。今は二子玉川の近くに住んでいます。来日してからいろいろな街で暮らしました。僕の場合、仕事が都心に集中しているので、バランスを取れる場所を探したら世田谷区の二子玉川だったんですね。
二子玉川は、都会の便利さが間近にありますが自然も豊かです。多摩川まで歩いて行けるし、僕の家の近くではタヌキを見かけるぐらいです。都市と自然のバランスが取れていて、環境的にはとても大好きですね。
僕の子どもたちが学んでいた区内の学校で何度も演奏をしたことがあります。思い出深いのは、息子の幼稚園でのクリスマスコンサート。「子どもだからこういう選曲にしよう」とは考えず、クラッシック、ジャズ、ポップス、童謡など幅広く選曲しました。
すべて喜んでくれて、盛り上がりました。子どもたちには僕がプロかどうかなんて関係ないし、お世辞も言いません。だから正直な反応として喜んでくれたのはうれしかった。よい勉強になりました。
コンサートには「物語」がある
コンサートは僕ひとりでは作れません。演奏者の後ろで企画者や制作スタッフなど、たくさんの方々が動いてくれています。みんなで作るのがコンサートです。だから、みんなが納得できる内容を入念に話し合い、作り上げていきます。
今回のコンサートも、みんなでワイワイとやりながら準備をしています。幅広い年齢層の方々が楽しめる音楽的にバラエティ豊かなプログラムを演奏したいと思います。
お子さんに音楽の素晴らしさを教える方法をよく聞かれます。やっぱり生のコンサートです。コンサートに行くと物語が生まれます。ワクワクしながら朝起きて、会場へ向かう時もいろいろな話をする。ドキドキして開演を待つ。終わった後もご飯を食べながら感想を語り合います。コンサートの前後の時間も含めて大きな物語になるのです。
僕もみなさんと物語を共有するのを楽しみにしています!

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